2020 08 07

エアコンが頑張って室温を抑えている音と、となりの介護施設の庭の草刈機の音だけが聞こえる静かな夏の午後。こんな日は誰も動きたくないよなと、来店がない理由を考える。

子供の頃の夢は「大人になっても夏休みがありますように」という事。一週間の休みとかじゃなくて丸々40日間の夏休みだ。引退してしまえば叶わないこともない。ただ働かないと食べていけないから本当に夢の話だ。

お店を開けて働いてはいるが、暇でのんびりしてるから実際休んでいるのとそう変わらない。気分は夏休み。どこか遠くへ旅行しなくても、真っ青な海を眺めることができるし、もくもくと広がり、刻々と変化していく入道雲は見ていて飽きない。毎朝、子供と一緒にラジオ体操に行く。まだ眠くて目がぱっちり開かないけれど、朝日が透ける木陰で早朝の空気の匂いをかぐのは気持ちいい。また明日ねって手を振り、友達と別れて帰る頃には頭上でセミの合唱が始まっている。

子供が野球チームに入ったおかげで練習に付き合ったり、試合の応援に行ける。自分の子が試合に出ていなくても、先輩のお兄ちゃんたちのホコリまみれ、汗まみれ、悔し涙まで流して、ぐしゃぐしゃになった顔をみて胸を打たれる。純粋に熱くなって楽しめるなんて最高だ。

子供の頃に覚えたアイスコーヒーの味。砂糖がたっぷり入ったインスタントコーヒーをポットに入れて冷蔵庫に冷やしてあった。「飲みすぎると鼻血でるからね」と母親に脅かされながらそうっと冷蔵庫から出して飲むのが好きだった。昼間にこっそりビールを飲もうと冷蔵庫を開けるとき、ひんやりした空気と共に思い出す。

2020もちゃんと夏休みがやってきた。長い休みがなくても、その気分で過ごせばいい。宿題や課題も自分で勝手に作る。そして大人になった僕の特典は休みが終わる憂鬱さがもうないってことだ。