タイムトラベル

先週の金曜日に来週の今頃はもう東京へ行って帰ってきてる頃だと、ふと思った。
本当にあっという間に一週間が過ぎた。
火曜の昼から木曜の昼までの47時間、僕は奄美から1200キロ以上離れた都会へ移動した。いつものベッドの代わりに寝床が必要なのでキャンセル可能なカプセルホテルを予約した。なぜかまた上野だった。約2か月前に道で迷ったところだ。駅に着きスマホのグーグルマップを開く。目的地まで28分と出た。なんだ、JRの上野駅じゃなかったのかよと、また失敗したと思った。ホテルの人に聞いたほうが早いと電話をかける。「今どちらですか?」「上野駅ですが」「なら丸井を背にして左の角におもちゃ屋さんがあるので、線路沿いを歩いて来てください。1分くらいです」と。
グーグルに騙されるとこだった。昨晩銀座で迷子になったのはそのマップのせい。なんでも手のひらのコンピューターを信じちゃいけない。
上野~御徒町~秋葉原、線路沿いなら迷わず歩ける距離だ。ただ僕が前回失敗したのは上野駅を山手線の内側にイメージしてしまったためだ。なんてことはない、上野と御徒町の位置関係さえ把握すれば以前泊まったホテルの場所もすぐに分かった。鏡のように裏返ると混乱してしまうのだ。異次元に迷い込んだような気がしたのはそのためだった。30年前に毎日通っていた場所なのに。
上野に到着する前に途中下車した銀座は真っ暗な空にビル群の電飾がやたら派手だったが、それよりもその先に浮かぶ月の美しさに見惚れた。地下で迷ったいなかのネズミがやっとの思いで地上へ顔を出し、真っ先に見つけたのは見慣れた月の灯りだった。
ホテルでもコンビニでも珈琲ショップやファーストフードの店でも外国人の店員さんばかりだ。片言の日本語にまるで僕が異国へ旅行しているような気分になる。確かに30年後の知らない世界に来ているんだと思った。電車の中でも本やマンガ、雑誌に代わりほぼ全員がスマホを見ている。それでもアメ横は全然変わらない。大きいけれど古い建物の裏は換気扇のしたにずっと落ちないホコリがこびりついたままだった。
2ヶ月ぶりの友人と17年ぶりの友人。同じ時間軸で生きてるけれど、会ってない時間が長いとやはりタイムスリップ感が増す。行きと帰りで1時間違う飛行時間だが約2時間でこの距離を移動できるなら昨日と今日ぐらいなら簡単に行ったり来たりできるマシーンも夢じゃないような。