迷子

出張の時はいつも相棒の実家にお世話になるパターンが多かったけれど、最近は家族みんなで行くのが子供の学校やら犬と猫の世話などで難しかったりで一人旅が増えた。懐かしい友人に会ったりするので帰りが遅くなってもいいようにと宿をとる。場所を決めずに当日近場で安いところを探す。寝て起きてシャワーを浴びることができたらいいのでカプセルで充分。が、今回はちょっと同じホテルで三日間泊まってみた。狭かったけれど清潔で快適な空間だった。それこそ終電ギリギリの12時を過ぎて戻るので寝るだけだったけれど拠点(帰るところ)があるのは安心だった。問題は最寄り駅が地下鉄だったこと。15分くらい歩けば山手線の御徒町があったけれど、なんとか迷路のような地下鉄を乗り継いで出掛けた。三日目の夜、上野から歩いて帰った時に道に迷った。出かけるときはまっすぐ迷わずに行けたのに帰りはどう間違えたのか、全くどこに進めばいいのかわからなくなってしまった。まるで「黄昏」のヘンリーフォンダになったような気分。自信を無くした。結局スマホのグーグルマップを頼ってなんとかたどりついたのだが、途中で何度かタクシーを捕まえようかと思うほど不安だった。二日前に一緒に飲んだ同郷の友人の「頑張れ!元東京人!」が蘇る。知らない街でもだいたい方向は分かるはず。鈍くなったのはやっぱり歳のせいか。いつもと違うベッド、眠れない夜、イヤフォンで音楽を聴きながら10年以上前に書いた話をメールの添付ファイルから呼び出して読み返した。やたらと「僕は」が多く出てきたので修正しながら。話の中身である36年前の自分とそれを書いた12年前の自分の思い。迷ったら辿ってきた道を振り返り現在地(今)を知ればいい。そしてまた前(未来)に向かって進む。まだまだ老いてはいけない。頭の中に響く「radio ga ga」がそんな風に思わせてくれたのかも。また音楽に救われた。